訪問看護ステーションの補助金2026|オンコール負担・記録のDX・自費サービスに使える8制度と補助1,380万円の試算
利用者は増えている。依頼も断りきれないほど来る。それでも手元に残らない——訪問看護ステーションが抱える悩みは、売上の単価を自分で決められないことに行き着きます。訪問看護の報酬は介護保険・医療保険の公定価格で、どれだけ質を上げても「値上げ」という手段が存在しません。動かせるのは訪問できる件数、取れる加算、事務にかかる時間、看護師が辞めない環境の4つです。この記事では、訪問看護ステーションが使える8つの制度を、従業員5人の事業所が1年で補助1,380万円を組み立てるモデルまで含めて整理します。
🏠訪問看護ステーションが直面する6つの構造課題
訪問看護を支援する理由は、在宅で療養する人を支える医療の担い手でありながら、小規模な事業所が多く、人に強く依存する構造にあるからです。自社の課題を業界共通の構図として書けると、申請書の説得力が上がります。
| いま起きていること | 補助金との関係 | |
|---|---|---|
| ① 報酬が公定価格 | 介護保険・医療保険の報酬は国が定め、値上げという手段がない | 「単価を上げる」ではなく「件数・加算・時間」で効果を書く必要がある |
| ② 看護師の採用難 | 病院と比べて小規模で、教育体制や待遇で見劣りしやすい | 処遇改善と働く環境への投資が、そのまま事業継続の条件になる |
| ③ 24時間オンコールの負担 | 夜間の呼び出しが特定の人に偏り、離職の最大の理由になりやすい | シフト分散・遠隔での状態把握の仕組みが投資対象になる |
| ④ 移動時間が売上にならない | 訪問と訪問の間の移動は報酬にならず、1日に回れる件数を縛る | ルートの最適化と直行直帰の仕組みで、同じ人数の訪問件数を増やす |
| ⑤ 記録と請求の事務量 | 訪問記録、報告書、レセプト請求が夜の事務作業になっている | 記録から請求までの自動連携が、残業と人件費を直接減らす |
| ⑥ 小規模ゆえに加算が取りにくい | 人員の余裕がなく、体制加算や特定の医療処置に手が出せない | 算定できていない加算を金額で示せば、投資の必要性が説明できる |
📋訪問看護ステーションが使える補助金8選 — 全体比較
| 制度名 | ねらい(訪問看護ステーションの場合) | 規模感の目安 |
|---|---|---|
| ① 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 保険外(自費)サービスの立ち上げ、専門特化した在宅医療の体制 | 中〜大(数百万〜数千万円) |
| ② 中小企業省力化投資補助金 | 遠隔での状態把握、記録端末、事務の自動化 | 中(数十万〜1,000万円) |
| ③ デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金) | 訪問看護記録・レセプト請求・オンコール管理の一元化 | 小〜中 |
| ④ 小規模事業者持続化補助金 | 採用サイト、ケアマネジャー向けの案内資料。※従業員5人以下が目安 | 小(数十万〜250万円規模) |
| ⑤ 業務改善助成金 | 事業場内最低賃金の引上げ+事業所の環境・衛生設備 | 小〜中(最大600万円) |
| ⑥ キャリアアップ助成金 | 有期契約の看護師・事務スタッフの正社員化 | 小〜中 |
| ⑦ 事業承継・M&A補助金(旧・事業承継・引継ぎ補助金) | 管理者の引退に備えた承継、近隣ステーションの引継ぎ | 中 |
| ⑧ 自治体・医療介護分野の支援 | 人材確保、ICT導入、地域医療介護総合確保基金による事業 | 小〜中 |
🚀①新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 — 本命の設備投資
2026年度、設備投資支援の中心がこの制度です。第1回公募は申請受付が令和8年9月30日(水)、応募締切が令和8年10月30日(金)18:00厳守とされています(2026年8月時点)。枠は革新的新製品・サービス枠(上限2,500万円/賃上げ特例3,500万円・補助下限100万円)、新事業進出枠(上限7,000万円/9,000万円・補助下限750万円)、グローバル枠(補助率2/3)の3つです。
訪問看護で筋の通る使い道は保険外(自費)サービスの立ち上げと専門特化した在宅医療の体制づくりです。報酬が公定価格である以上、価格を自分で決められる領域を持つ意味は大きい。旅行や外出の付き添い、保険の範囲を超えた長時間の見守りといった自費サービスは、新しいサービスの開発として説明しやすい筋書きです。従業員5人以下の区分では革新枠の補助上限額は750万円、小規模企業者なら補助率2/3とされています。ただし革新枠は新製品・新サービスの開発が必須で、既存の訪問看護をそのまま続けるための設備更新は対象になりにくい点に注意してください。
🤖②中小企業省力化投資補助金 — 人手不足そのものが申請理由になる
人手不足の解消につながる省人化・自動化の投資を支援する制度です。カタログに登録された製品から選ぶカタログ型と、個別に計画する一般型があり、カタログ型の補助上限額は従業員数の区分に応じて200万円・500万円・1,000万円という水準が設定されています(2026年8月時点)。
訪問看護で人の時間を奪っているのは移動・記録・夜間の確認です。遠隔で血圧や体温を把握できる機器、訪問先で音声入力できる端末、訪問ルートを組み替える仕組みなどが対象になり得ます。「1訪問あたりの記録時間が何分、移動が何分、年間で何時間」を先に集計してください。この業種は削った時間がそのまま訪問件数に変わるため、効果を書きやすいのが強みです。入れたい機器がカタログに登録されているかは先に確認してください。
💻③デジタル化・AI導入補助金2026 — 事務と現場をつなぐ
旧・IT導入補助金です。登録されたツールと支援事業者の中から選ぶ方式のため、入れたいソフトが登録されているかを先に確認する必要があります。補助率・上限額・対象ツールは公募回により変わります。
訪問看護の事務を重くしているのは記録・計画書・報告書・レセプト請求です。介護保険と医療保険の両方を扱うため請求が二重になり、月初は事務に人が張り付きます。記録から請求までを自動で連携させる、オンコールの割当てと記録をシステムで共有する——この2つは、残業時間と事務の人件費に直接効きます。対象ツールと支援事業者が登録制である点は、先に確認が必要です。
🎁④小規模事業者持続化補助金 — 最初の1本に向く
販路開拓の取組を支援する制度です。小規模事業者の判定は業種で変わり、製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下とされるのが一般的です。補助上限額・補助率・締切は公募回により変わります。
従業員5人以下なら使いやすい制度です。採用サイトや採用動画、ケアマネジャー・病院の連携室に向けた案内資料が使い道になります。通常枠の補助上限額は50万円とされ、特例を使うと上がる設計です(公募回により変わります)。この業種の集客は、利用者本人ではなくケアマネジャーと病院からの紹介です。誰に向けた資料かを間違えないでください。
💴⑤業務改善助成金 — 賃上げと設備投資をセットにする
事業場内最低賃金の引上げ計画と生産性向上に資する設備投資等の計画を立てて申請し、計画どおり実施した場合に設備投資等の費用の一部が助成されます。令和8年度は50円・70円・90円の3コースで、助成上限額は引上げ額と引き上げる労働者数の組み合わせで決まり、最大600万円(10人以上の区分は特例事業者のみ)とされています。助成率は事業場内最低賃金1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることが要件とされ、申請期間は令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までと短いため、都道府県ごとの発効日を先に確認してください。
事業所の空調・照明、感染対策や衛生にかかわる設備といった働く環境の設備と賃上げをセットにできます。助成の上限額はコースと引き上げる人数で決まります(例:90円コースで2〜3人を引き上げる場合、事業場規模30人未満なら240万円)。看護師の採用が難しい業種だけに、時給の水準を上げられる制度は採用面でも効きます。
👥⑥キャリアアップ助成金 — 人の定着に効く
有期契約労働者の正社員化等に対する助成で、正社員化は1人あたり80万円とされる区分があります。先に計画の届出をしてから実施する順序が求められるため、「もう正社員にしてしまった」では対象外になり得ます。
パートの看護師を常勤へ、有期契約の事務を正社員へ——という流れを作りやすい業種です。先に計画の届出をしてから実施する順序が求められる点に注意してください。訪問看護は看護職員の常勤換算2.5以上という人員基準が指定の条件とされているため、人の定着は事業継続そのものに直結します。
🤝⑦事業承継・M&A補助金 — 60代社長の会社こそ
旧・事業承継・引継ぎ補助金です。承継そのものだけでなく承継を機に新しいことをやる取組や、同業の譲受け、専門家費用を支援する設計になっています。
訪問看護ステーションは管理者が保健師または看護師でなければならないとされており、管理者の引退がそのまま閉鎖につながる構図があります。近隣のステーションを引き継げば、利用者と看護師との関係がまとめて残ります。ただし指定は事業所ごとのもので、そのまま引き継がれるとは限りません。承継の形(事業譲渡・合併・株式譲渡)によって手続が変わるため、都道府県または市区町村の指定担当課に確認してください。
🏙⑧自治体独自の補助金 — 小さいが確実に効く
資格取得・講習費、展示会出展、設備更新、省エネ、若手採用など。窓口が中小企業支援の部署とは限らないため、「市区町村名+補助金」で探すより商工会議所・商工会に電話するほうが早いのが実情です。
この業種で最も見落とされやすい領域です。地域医療介護総合確保基金の事業、介護分野のICT導入支援、看護職員の確保・定着の補助など、窓口が医療政策・介護保険・福祉の担当課にあることが多く、中小企業支援の窓口だけを見ていると気づきません。制度の有無・内容・対象となる法人形態は自治体ごとに大きく異なります。
🛠訪問看護ステーションならではの「使い道」具体例
| 導入するもの | 金額の目安 | 効果として書けること |
|---|---|---|
| 訪問看護記録・レセプト請求システム | 80万円〜320万円 | 記録から請求までを自動で連携し、月初の事務を圧縮する |
| 遠隔バイタル測定・見守り機器 | 120万円〜480万円 | 夜間の状態確認を訪問なしで行い、オンコールの負担を減らす |
| 携帯型超音波診断装置(ポータブルエコー) | 150万円〜500万円 | 在宅での観察の幅を広げ、専門性の高い依頼を受けられるようにする |
| 褥瘡ケア・医療処置の機材一式 | 60万円〜240万円 | 処置の範囲を広げ、病院から依頼される利用者の層を変える |
| 訪問記録端末・音声入力機器 | 40万円〜180万円 | 訪問先で記録を終わらせ、持ち帰りの事務をなくす |
| オンコール・シフト管理システム | 30万円〜120万円 | 夜間の当番を分散し、特定の1人への集中をなくす |
| サテライト事業所の内装・什器 | 150万円〜600万円 | 訪問エリアを広げ、移動時間を短くする |
| 電動アシスト自転車・駐輪設備 | 30万円〜150万円 | 渋滞と駐車場所に左右されず、都市部の訪問件数を増やす |
| 採用サイト・採用動画 | 30万円〜150万円 | 看護師の応募を増やし、人員基準の余裕をつくる |
🧮モデルケース:従業員5人(看護師4人・事務1人)の訪問看護ステーションが1年で使える組み合わせ
看護師4人・事務1人、株式会社で運営する訪問看護ステーションが、オンコールの負担を減らしながら保険外サービスを立ち上げる想定で並べます。サービス業は従業員5人以下が小規模事業者の目安とされ、この規模ならその範囲に入るため補助率が有利になり得ます。医療法人・社会福祉法人の場合は対象外とされることがあるため、法人形態を公募要領の対象者欄で必ず確認してください。
| 使う制度 | 導入するもの | 投資額 | 補助率 | 補助される額 | ねらう効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 (革新的新製品・サービス枠) | 携帯型超音波診断装置 380万円 褥瘡ケア・医療処置の機材 180万円 サテライト事業所の内装・什器 330万円 試行・教育・専門家経費 160万円 | 1,050万円 | 2/3 (小規模企業者) | 700万円 | 保険外の付き添い・長時間支援を新サービスにし、価格を自社で決められる売上をつくる |
| 中小企業省力化投資補助金 (カタログ型・区分は仮定/登録の有無は要確認) | 遠隔バイタル測定・見守り機器 240万円 訪問記録端末・音声入力機器 160万円 | 400万円 | 1/2 | 200万円 | 夜間の状態確認と記録の年間1,840時間を削減 |
| 業務改善助成金 (90円コース・2人引上げを仮定) | 事業所の空調・照明 140万円 感染対策・衛生設備 100万円 ※30人未満・2〜3人は上限240万円の区分 | 240万円 | 3/4 (事業場内最低賃金1,050円以上の場合) | 180万円 | 事業場内最低賃金を引き上げ、看護師の採用を有利にする |
| デジタル化・AI導入補助金2026 (旧・IT導入補助金) | 訪問看護記録・レセプト請求システム 120万円 オンコール・シフト管理 60万円 | 180万円 | 1/2 | 90万円 | 介護保険と医療保険の請求を一元化し、月初の残業をなくす |
| 小規模事業者持続化補助金 ※サービス業は従業員5人以下が目安 | 採用サイト・採用動画 45万円 ケアマネジャー向け案内資料 30万円 | 75万円 | 2/3 | 50万円 | 看護師の応募とケアマネジャーからの紹介を増やす |
| キャリアアップ助成金 (正社員化) | 看護師・事務スタッフ2名を正社員化 | 賃金原資 | 定額 | 160万円 (1人80万円×2名) | 人員基準の余裕と、オンコールを分担できる体制 |
| 合計 | — | 1,945万円+賃金原資 | — | 1,380万円 | 設備投資1,945万円に対する補助は1,220万円(約63%)で、自己負担は約725万円。これとは別に、雇用関係の助成が160万円 |
⚠️訪問看護ステーションならではのNGパターン3つ
✍️採択を上げる事業計画書のコツ
| 書く順番 | 内容 | 訪問看護ステーションでの具体例 |
|---|---|---|
| ① 現状の課題を数字で | 訪問件数・移動時間・記録時間・未算定の加算 | 「1人1日の訪問は4.2件」「移動が1日96分」「記録と請求で月38時間の残業」 |
| ② 投資と、その効果 | どの数字がどう動くか | 「記録の音声入力とルート最適化で1日5.1件へ。年間の訪問が◯件増える」 |
| ③ 空いた時間を何に変えるか | 最も抜けやすい | 「夜間確認と記録の年1,840時間を解放し、訪問と保険外サービスに充てる」 |
| ④ 誰に売るのかを書く | 客層が変わることを示す | 「既存は介護保険の利用者が売上の78%。保険外の付き添いは、いま取れていない層」 |
❓よくある質問
※本記事の金額・要件は2026年8月時点の一般的な枠組みをもとにした目安です。公募回により要件・上限・補助率は変わります。必ず最新の公募要領をご確認ください。
本記事の情報について
本記事は公開時点で確認できる公募要領等の一次情報に基づいて作成しています。補助金・助成金の制度内容、補助上限額、補助率、公募期間は予告なく変更される場合があり、同一制度でも公募回次によって要件が異なります。制度の統合・名称変更が行われることもあります。
ご申請の前には、必ず各制度の公式サイトおよび最新の公募要領をご確認ください。
本記事は制度の情報提供を目的とするもので、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。最終的なご判断は、各制度の公募要領および管轄の窓口・有資格者にご確認ください。
この補助金の公募開始と締切を、メールでお知らせします
補助金の公募期間は中央値で36日しかなく、公表に気づいた時点で締切まで1か月を切っていることも珍しくありません。公募開始日と締切が公表され次第、無料でお送りします。業種をご記入いただくと、その業種で対象になりやすい制度を優先してお送りします。
お送りするのは制度の情報のみです。メールアドレスはお知らせ配信以外の目的には使用しません。