新事業進出・ものづくり商業サービス補助金2026|受付9/30開始・締切10/30から逆算する着手日

| カテゴリ: 補助金の基本 | 著者:採択ナビ代表(行政書士 / 認定経営革新等支援機関)

2026年度、中小企業の設備投資支援の中心が「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に切り替わりました。第1回公募の申請受付は令和8年9月30日(水)から、応募締切は令和8年10月30日(金)18:00厳守。当初予定から1か月まるごと後ろにずれたという経緯があり、いま検索して出てくる情報には古い日程が混在しています。この記事では、公式サイトで確認できる第1回公募の内容を、3つの枠・従業員数別の上限額・対象経費の違い・賃上げ特例の損得まで、数字で整理します。(2026年8月時点。公募要領は2026年8月14日に更新されています。最新版を必ずご確認ください)

🙋
中小企業の社長さん
先生、うちの顧問先から「ものづくり補助金が無くなったって本当か」と聞かれまして。ネットで調べたら似た名前の制度が3つくらい出てきて、正直わけが分からなくなりました。
👨‍🏫
ナビ先生(行政書士)
それ、いま一番多い混乱です。しかも「似た名前の別制度」が実際に併存しているので、勘違いではありません。まず名前の整理からいきましょう。ここを間違えると、古い公募要領を読んで準備してしまうという最悪の事故が起きます。
🙋
社長さん
えっ、そんなことあります? 同じような名前の制度が同時にあるってことですか。
👨‍🏫
ナビ先生
はい。公式サイトにも「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」とわざわざ注記が出ているほどです。国の側も、混同されることを想定しているわけですね。

🧩まず名前を整理する — 何と何が、どう変わったのか

2026年度から公募が始まったのが「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。名前が長いので、本記事では以降「新統合補助金」と略しますが、申請書類や検索の際は必ず正式名称を使ってください。似た名称の制度と取り違えるリスクがあります。

名称位置づけ取り違え注意
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
(本記事の主題)
2026年度から公募。革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠の3枠構成。第1回公募の公募要領は2026年6月29日公開、8月14日に更新これが現行の本命。実施は中小企業基盤整備機構
中小企業新事業進出補助金「新事業進出」の名を持つ別制度公式に「異なる補助金」と明記。公募回・要件・様式が別
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金いわゆる「ものづくり補助金」の正式名称にあたる制度こちらも「異なる補助金」と明記。過去回の要領を流用しない

出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト(中小企業基盤整備機構)/中小企業庁 補助金公募情報

いちばん危険な事故検索上位に、旧制度の解説記事や古い公募回の要領PDFが大量に残っています。「補助上限1,250万円」「賃上げ特例なし」といった過去回の数字を前提に計画を作り、提出直前に要件違いが発覚——という事故が毎年起きます。数字は必ず、公式サイトの現行の公募要領で突き合わせてください。
🙋
社長さん
なるほど。で、うちに関係あるのはどれなんですか。
👨‍🏫
ナビ先生
これから設備を入れて新しい製品・サービスを開発する、あるいはいままでと違う市場に打って出る、または輸出を始める——このどれかなら、新統合補助金の射程です。逆に「今の商売をそのまま効率化したい」だけなら、この制度ではなく別の枠を考えたほうがいい。

📅第1回公募のスケジュール — 日程は1か月まるごと後ろにずれた

🙋
社長さん
締切、8月末じゃなかったですか? 私、そう聞いていたんですが。
👨‍🏫
ナビ先生
それが今回いちばん大事な情報です。2026年7月17日にスケジュールが変更されました。公式サイトの日程表では、古い日付に取消線が引かれて新しい日付が並記されています。結論だけ言えば、受付も締切も、まるごと1か月後ろ倒しです。
項目当初の予定(取消済み)現在の日程
公募開始令和8年6月29日(月)令和8年6月29日(月)
※変更なし
申請受付令和8年8月31日(月)令和8年9月30日(水)
応募締切令和8年9月30日(水)18:00令和8年10月30日(金)18:00厳守
公募要領2026年6月29日 公開2026年7月17日 更新/2026年8月14日 更新

出典:公式サイト「公募スケジュール」欄(2026年8月時点で確認)

この1か月をどう使うか後ろ倒しは、準備が遅れていた事業者にとっては棚ぼたの猶予です。この記事の公開時点(8月下旬)から締切まで約2か月。GビズIDプライムの取得、認定支援機関との調整、相見積の取得——時間がかかる工程を先に片づければ、十分に間に合う日程です。逆に、9月30日の受付開始を待ってから動き出すと、実質1か月しか残りません。
「受付開始」と「公募開始」は別物公募開始(6月29日)は要領が公開されて内容を検討できる日、申請受付(9月30日)は電子申請システムに実際に提出できる日です。つまり準備期間は6月29日からすでに始まっていると考えるのが正解。「受付開始日が着手日」ではありません。
🙋
社長さん
採択の発表はいつごろになるんでしょう。
👨‍🏫
ナビ先生
締切が10月30日ですから、結果が出るのは年明け以降を見ておくのが現実的です。そこから交付申請、発注、工事や機械の納入、実績報告——と続くので、お金が実際に入るのはさらに先。設備代金は先に自社で払う前提の資金計画が必要になります。具体的な発表時期は公式のお知らせでご確認ください。

🎯3つの枠 — まず自社がどれに当たるかを決める

新統合補助金は3つの枠に分かれています。金額の大小ではなく、「何をする事業か」で枠が決まるのが特徴です。ここを取り違えると、内容がどれだけ良くても土俵違いで落ちます。

💡
革新的新製品・
サービス枠
自社の技術で新しい製品・サービスを「開発」する
上限 2,500万円
🚀
新事業進出枠
既存事業とは違う新市場・高付加価値事業へ「進出」する
上限 7,000万円
🌏
グローバル枠
輸出に向けて国内の製造・供給体制を「強化」する
上限 7,000万円
枠補助率補助上限額(基本/賃上げ特例適用時)補助下限額
革新的新製品・サービス枠中小企業者 1/2(一定の条件で2/3)
小規模企業・小規模事業者、再生事業者 2/3
最大 2,500万円/最大 3,500万円100万円
新事業進出枠中小企業者 1/2(一定の条件で2/3)最大 7,000万円/最大 9,000万円750万円
グローバル枠中小企業者 2/3最大 7,000万円/最大 9,000万円750万円

出典:公式サイト 各枠の概要(2026年8月時点)。括弧内の補助率は、地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける事業者に適用されるとされています。

下限額に注意 — 小さい投資は門前払い新事業進出枠とグローバル枠は補助下限額が750万円です。補助率1/2なら投資額1,500万円以上、補助率2/3なら投資額1,125万円以上の規模がないと、そもそも申請できない計算になります。「300万円くらいの設備を入れたい」という規模なら、革新枠(下限100万円)か、まったく別の制度を検討してください。
🙋
社長さん
下限があるって、初めて聞きました。上限ばかり気にしていました。
👨‍🏫
ナビ先生
ここ、意外と知られていません。下限750万円は「本気の設備投資をする会社向けの制度ですよ」という国からのメッセージです。逆に言えば、腹をくくって数千万円を投じる会社にとっては、これほど強力な後押しはない。グローバル枠なら補助率2/3ですからね。1,500万円の投資に1,000万円出る計算です。

💡①革新的新製品・サービス枠 — 「開発」がないと対象外

革新枠は、自社の技術力を活かして新しい製品・サービスを開発する取組を支援するものです。公式の説明で決定的に重要なのは、次の2点です。

対象外になる2パターン(公式に明記)① 既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外。② 単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものも対象外。つまり「良い機械を買って効率を上げます」だけでは、この枠では通りません。
もうひとつの線引き「業種ごとに同業の中小企業者等(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発」も該当しないとされています。同業でとっくに当たり前になっている取組は、革新性の説明が立ちません。

従業員数によって上限額が段階的に変わります。自社の規模で天井がどこにあるかを最初に確認してから、投資計画を組んでください。

従業員数基本の補助上限額賃上げ特例適用時差額(特例の価値)
1〜5人750万円850万円+100万円
6〜20人1,000万円1,250万円+250万円
21〜50人1,500万円2,500万円+1,000万円
51人以上2,500万円3,500万円+1,000万円

補助率は中小企業者1/2(一定の条件で2/3)、小規模企業・小規模事業者および再生事業者は2/3とされています。補助下限額は100万円です。つまり200万円の投資(補助率1/2)から申請可能で、3つの枠の中では最も入口が広い枠と言えます。

小規模なら補助率2/3が効くたとえば投資1,500万円・補助率2/3なら補助は1,000万円、自己負担500万円。同じ投資でも補助率1/2なら補助750万円、自己負担750万円です。自社が小規模企業者に当たるかどうかで、手残りが250万円変わるということ。従業員数の数え方(役員・パートの扱いなど)は公募要領で定義されているので、必ず原文で確認してください。

🚀②新事業進出枠 — 「新規性」と「新市場」の両方が要る

新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。金額が大きい(最大7,000万円、賃上げ特例適用時9,000万円)ぶん、要件の読み込みが必要になります。

2つの条件を同時に満たすこと① 新たに製造・提供する製品等が、その会社にとって新規性を有すること。② その製品等が属する市場が、その会社にとって新たな市場であること。「新しい製品」だけでも「新しい客層」だけでも足りず、両方が要る——ここが最大の関門です。

公式の説明で、実務上とくに注意すべき点を3つ挙げます。いずれも誤解が非常に多い箇所です。

論点公式の考え方実務上の意味
新規性のレベル補助事業に取り組む中小企業等にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではない特許級の発明は不要。自社にとって初めてなら土俵に乗る
再製造はNG過去に製造等していた製品等を再製造等することは、新たな製品等を製造等しているとは言えず補助対象外「昔やっていた事業の復活」は使えない
着手時期申請予定公募回の公募開始日以降に初めて取り組んでいる事業について、新規性を有するものとみなすとされているすでに走らせている新規事業は、新規性の説明が難しくなり得る

出典:公式サイト「新事業進出枠とは」(2026年8月時点。表現は要約しています。判断は必ず公募要領の原文で行ってください)

「新たな市場」の定義を甘く見ない公式では、新たな市場とは既存事業において対象となっていなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする市場を指すとされています。「同じ商品を隣の県でも売る」は新市場になりません。顧客の属性が変わっているかどうかが判断軸です。
従業員数基本の補助上限額賃上げ特例適用時補助率1/2で必要な投資額(上限まで使う場合)
1〜20人2,500万円3,000万円5,000万円/6,000万円
21〜50人4,000万円5,000万円8,000万円/1億円
51〜100人5,500万円7,000万円1億1,000万円/1億4,000万円
101人以上7,000万円9,000万円1億4,000万円/1億8,000万円
右端の列がこの表の要点上限額は「そこまで出る」という意味であって、「そこまで出る計画がある」わけではありません。補助率1/2の枠で7,000万円を受け取るには、1億4,000万円の投資が必要です。上限の数字だけを見て期待すると、実際の試算で必ず落胆します。自社が用意できる投資額 × 補助率から逆算するのが正しい順番です。

🌏③グローバル枠 — 補助率2/3がいちばん効く枠

🙋
社長さん
輸出なんて、うちみたいな会社には縁がないと思っていました。
👨‍🏫
ナビ先生
ところが、3枠の中で補助率がいちばん高いのがグローバル枠(2/3)なんです。しかも支援対象は「海外に会社を作る」話ではなく、輸出に向けた国内の製造・供給体制の強化。つまりお金が出るのは日本国内の設備です。ここを誤解して最初から検討外にしている会社が、かなり多い。

グローバル枠が対象とするのは、海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組です。公式の説明では、次の2つを同時に満たすことが求められるとされています。

01
自発的な取組であること 自社の製品等を活用し、自発的に新たな海外販路を開拓するうえで必要となる国内製造等拠点の強化。取引先主導の事業は「自発的な取組」とは言えず補助対象外とされています
02
新たな海外市場であること 既存事業において対象となっていなかった国・地域の市場。ここでの地域とは統計上、国に準じてカウントされる領域であり、行政区画ではないとされています
「取引先に頼まれて増産する」はNGこれはグローバル枠特有の落とし穴です。商社や親会社から「輸出用に増産してほしい」と言われて設備を入れる——これは自発的な取組ではないと判断され得ます。自社が主体的に海外販路を開拓する計画であることを、書面で示せるかどうかが分かれ目になります。
従業員数基本の補助上限額賃上げ特例適用時補助率2/3で必要な投資額(上限まで使う場合)
1〜20人2,500万円3,000万円3,750万円/4,500万円
21〜50人4,000万円5,000万円6,000万円/7,500万円
51〜100人5,500万円7,000万円8,250万円/1億500万円
101人以上7,000万円9,000万円1億500万円/1億3,500万円
同じ7,000万円でも必要投資額が3,500万円違う新事業進出枠(補助率1/2)で7,000万円を取るには1億4,000万円の投資が必要ですが、グローバル枠(補助率2/3)なら1億500万円で届きます。差額は3,500万円。輸出という選択肢が現実的にあるなら、枠の選定だけで資金負担がこれだけ変わる、ということです。

🧾対象経費の違い — 建物費が使えるかどうかが最大の分岐

🙋
社長さん
工場を建て増ししたいんですが、建物の工事費も対象になりますか。
👨‍🏫
ナビ先生
それがまさに枠選びの決定打になります。公式の対象経費一覧を見ると、建物費が入っているのは新事業進出枠とグローバル枠だけ。革新枠には入っていません。建屋が絡む計画なら、この時点で枠が絞られます。
経費区分革新的新製品・サービス枠新事業進出枠グローバル枠
機械装置・システム構築費○(必須)○○
建物費×○○
運搬費○○○
技術導入費○○○
知的財産権等関連経費○○○
外注費○○○
専門家経費○○○
クラウドサービス利用費○○○
原材料費○○○
広告宣伝・販売促進費○○○
海外旅費××○
通訳・翻訳費××○

出典:公式サイト 各枠の補助対象経費(2026年8月時点)。経費区分ごとに補助上限が設けられており、詳細は公募要領に記載されています。

「必須経費」を外すと、その時点で不備公式には次のように整理されています。革新枠は「機械装置・システム構築費は必須」。新事業進出枠とグローバル枠は「機械装置・システム構築費又は建物費のいずれかが必ず補助対象経費に含まれていなければならない」。ソフトウェアや広告費だけを積んだ申請は、この段階で成立しません。
「計上した経費がすべて認められるわけではない」公式サイトにも「応募時に計上している経費がすべて補助対象として認められる訳ではないことにご留意ください」と明記されています。交付決定の段階で経費が削られることは普通に起こります。削られても事業が成立する資金計画にしておくのが実務の鉄則です。対象経費の考え方は補助金の対象経費2026|何が出て何が出ないかを具体例で線引きで詳しく整理しています。

📈賃上げ特例 — 上限は上がるが、未達なら返還もあり得る

🙋
社長さん
上限が1,000万円も増えるなら、賃上げ特例は付けたほうが得ですよね?
👨‍🏫
ナビ先生
そこは慎重に。公式サイトにはっきり書かれています——「目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合があります」と。もらった後の5年間、数字を背負うということです。付けるかどうかは、増える金額と背負うリスクを天秤にかけて決めてください。

賃上げ特例の適用を受けるには、補助事業終了後3〜5年の事業計画において、次のすべてを満たす必要があるとされています。

①
付加価値額 年平均成長率 +4.0%以上 増加
②
1人あたり給与支給総額 年平均成長率 +3.5%以上 増加
③
事業場内最低賃金 地域別最低賃金より +30円以上 高い水準

この3つは「どれか1つ」ではなくすべてです。とくに②の1人あたり給与支給総額 年平均+3.5%は、5年続けると累計で約19%の増加に相当します。人を増やせば分母も増えるため、採用計画とセットで考えないと達成が難しくなる指標です。

枠・規模基本上限特例適用時増える額背負う義務
革新枠 1〜5人750万円850万円+100万円3〜5年の計画で①付加価値+4.0%/年、②1人あたり給与+3.5%/年、③事業場内最低賃金+30円以上をすべて達成。未達なら一部または全額の返還義務が生じる場合がある
革新枠 6〜20人1,000万円1,250万円+250万円
革新枠 21〜50人1,500万円2,500万円+1,000万円
新事業進出枠 21〜50人4,000万円5,000万円+1,000万円
新事業進出枠 51〜100人5,500万円7,000万円+1,500万円
新事業進出枠 101人以上7,000万円9,000万円+2,000万円
判断の目安増える額が100万円〜250万円(革新枠の小規模区分)の場合、5年間の賃上げ義務と返還リスクに見合うかは慎重に考える価値があります。一方、+1,000万円〜2,000万円の区分では、そもそも賃上げできる収益構造を作る計画でなければ事業自体が成立しないはずなので、特例を前提に設計するのが自然です。「増える額の大きさ」と「賃上げの実現可能性」が一致しているかを見てください。
もう一つの特例(補助率の引上げ)各枠の補助率に括弧書きがあるのは、地域別最低賃金引上げ特例の適用による補助率の引上げを受ける事業者に適用されるものとされています。上限額の特例(賃上げ特例)とは別の仕組みです。どちらの特例を使うのか、併用できるのかは公募要領で必ず確認してください。

🧮モデルケース① — 従業員28人の金属加工会社が新事業進出枠を使う

🙋
社長さん
数字が並ぶと分かった気になるんですが、うちの場合いくらになるのかがピンと来ません。
👨‍🏫
ナビ先生
ではモデルを2つ置いて、金額で並べてみましょう。1つめは従業員28人・年商4億2,000万円の金属加工会社。自動車部品の下請プレス加工から、医療機器向けの精密部品に進出する想定です。既存の顧客層(自動車Tier2)とはまったく違う属性の客先なので、新市場の説明が立ちます。
経費区分内容金額備考
建物費クリーンルーム対応の新棟増築(約180㎡)3,200万円この枠では対象。革新枠なら計上不可
機械装置・システム構築費5軸マシニングセンタ 1台2,800万円必須経費を満たす主役
機械装置・システム構築費三次元測定機 1台950万円医療向けの検査体制に必須
機械装置・システム構築費生産管理・トレーサビリティシステム380万円ロット追跡は医療分野の要求
原材料費試作用チタン・ステンレス材210万円試作分のみ。量産材は対象外の扱いに注意
専門家経費医療機器品質マネジメント体制の構築支援180万円外部専門家の指導料
広告宣伝・販売促進費医療機器展示会への出展・技術資料制作340万円新市場の販路開拓費
外注費表面処理の試験・評価委託260万円自社設備で対応できない工程
投資額 合計—8,320万円—
試算賃上げ特例なし賃上げ特例あり
補助対象経費8,320万円8,320万円
補助率1/21/2
計算上の補助額4,160万円4,160万円
上限額(21〜50人)4,000万円5,000万円
実際の補助額4,000万円(上限で頭打ち)4,160万円(補助率で頭打ち)
自己負担4,320万円4,160万円
特例で増える手残り—160万円
この試算が教えてくれること上限額は5,000万円に上がっても、補助率1/2という別の天井があるため、増えるのは160万円だけでした。上限の引上げ幅(+1,000万円)がまるごと手に入るわけではないのです。賃上げ特例の損得は、「上限がいくら上がるか」ではなく「自社の投資額 × 補助率が上限を超えているか」で決まります。超えていなければ、特例を付けても手残りはほとんど変わりません。
逆算するとこうなるこのモデルで特例の恩恵を最大化するには、投資額を1億円まで積む(1億円 × 1/2 = 5,000万円)必要があります。逆に投資額が8,000万円以下なら、賃上げ義務を背負ってまで特例を付ける意味はほぼありません。この線引きを申請前に電卓で出しておくこと。

🧮モデルケース② — 従業員9人の食品製造会社が革新枠を使う

👨‍🏫
ナビ先生
2つめは規模の小さいケース。従業員9人・年商1億1,000万円の食品製造会社が、既存の惣菜製造の技術を活かしてフリーズドライの新商品を開発する想定です。ここでのポイントは補助率2/3が効くかどうか。
経費区分内容金額備考
機械装置・システム構築費小型真空凍結乾燥機 1台780万円開発の中核設備。必須経費に該当
機械装置・システム構築費自動充填包装機420万円新商品の形態に対応
機械装置・システム構築費金属検出機・重量選別機180万円量販店の取引条件をクリアする
原材料費試作用原材料(20試作分)90万円開発に要する分
外注費成分分析・賞味期限設定試験80万円外部試験機関へ委託
専門家経費食品開発コンサルタントの指導40万円—
広告宣伝・販売促進費パッケージデザイン・展示会出展170万円—
投資額 合計—1,760万円—
試算補助率1/2の場合補助率2/3の場合
補助対象経費1,760万円1,760万円
計算上の補助額880万円1,173万円
上限額(6〜20人・基本)1,000万円1,000万円
実際の補助額(基本)880万円1,000万円(上限で頭打ち)
上限額(賃上げ特例適用時)1,250万円1,250万円
実際の補助額(特例適用時)880万円(変わらず)1,173万円
自己負担(特例適用時)880万円587万円
2つのモデルの結論大型のケース(モデル①)では補助率が天井になり、小型のケース(モデル②)では上限額が天井になりました。自社がどちらの天井に当たるかで、打つべき手が正反対になります。補助率が天井なら投資額を積んでも比例して増えるだけ、上限が天井なら投資を積んでも1円も増えません。申請前に必ず、この2つの数字を並べて計算してください。
試算モデルであることの明示上記2件は、本サイトが公表されている制度要件と一般的な設備単価をもとに作成した試算モデルであり、特定の企業の採択実績ではありません。実際の補助額は、申請枠・審査結果・従業員数の判定・経費区分ごとの上限・賃上げ要件の達成状況によって変わります。補助率2/3の適用可否(小規模企業者・再生事業者等の該当性)は公募要領の定義でご確認ください。

🗓10月30日18:00から逆算する — 残り時間の使い方

🙋
社長さん
受付開始が9月30日なら、9月に入ってから動けば十分ですかね。
👨‍🏫
ナビ先生
それが一番危ない考え方です。受付開始を待たなくてもできる準備が、全体の8割を占めます。しかもGビズIDプライムのように、自社の努力では期間を短縮できない工程がある。ここを最初に着手しないと、内容がどれだけ良くても間に合いません。
01
いますぐ:GビズIDプライムの取得状況を確認 未取得なら最優先。取得には手続と審査の期間が必要で、締切直前に慌てても間に合いません。詳しくはGビズIDプライム取得2026へ
02
いますぐ:公募要領の最新版をダウンロード 2026年8月14日に更新されています。7月以前にダウンロードした版で作業していないか確認を
03
8月下旬:枠を決める 建物費が要るか/開発なのか進出なのか輸出なのか/下限750万円を超える規模か。ここが決まらないと計画書が書けません
04
9月上旬:見積を取り始める 設備は納期と価格の妥当性の説明が要ります。複数社から取るのが原則。建屋が絡むなら設計事務所の手配も
05
9月上旬:認定支援機関・金融機関に相談 公式サイトに「認定支援機関について」の案内があります。確認書が必要な場合、相手方の作業時間を見込む必要があります
06
9月中旬:事業計画書のドラフト完成 新規性と新市場を「誰にどう説明するか」を固める。数字の裏づけをここで作る
07
9月30日:電子申請システムで入力開始 受付開始日。入力してみて初めて必要と分かる項目があるため、早めに触っておく
08
10月中旬:添付書類を揃える 労働者名簿、決算書、賃上げ表明の書類、加点に関する証憑など。枚数が多く、ここで必ず時間を食います
09
10月23日ごろ:提出完了を目標に 締切1週間前。締切直前はシステムが混み合うことが想定されます
10
10月30日(金)18:00:締切厳守 1分でも過ぎれば受け付けられません。「18:00」は営業終了ではなく締切時刻です
逆算するとこうなるこの記事の公開時点(8月22日)から締切まで69日、受付開始まで39日。実質的な作業日は土日祝を除くと約47営業日です。事業計画書に20営業日、添付書類に10営業日、見積取得に15営業日——並行して進めても、余裕があるとは言えない日程だと分かるはずです。

⚠️つまずきポイント8選

① 古い日程・古い要領で準備してしまういちばん多い事故です。受付は9月30日から、締切は10月30日18:00。要領は2026年8月14日更新版。検索で出てくる解説記事の日付を必ず確認し、数字は公式サイトで突き合わせてください。
② 似た名前の別制度と取り違える「中小企業新事業進出補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、公式に「異なる補助金です」と明記された別制度です。様式も要件も違います。
③ GビズIDプライムが間に合わない電子申請の前提となるアカウントです。取得には相応の期間が必要で、締切直前に申し込んでも間に合いません。まだ持っていないなら、今日着手すべき唯一の作業です。
④ 必須経費が入っていない革新枠は機械装置・システム構築費が必須。新事業進出枠・グローバル枠は機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須。広告費と外注費だけの計画は成立しません。
⑤ 補助下限額を下回っている新事業進出枠・グローバル枠の下限は750万円。補助率1/2なら投資1,500万円が最低ラインです。小規模な投資は革新枠(下限100万円)か別制度へ。
⑥ 「新規性」を世の中の新規性と誤解する公式には「世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません」と明記されています。過度に大きな話を作る必要はなく、自社にとっての新規性を具体的に書くほうが伝わります。
⑦ すでに始めている事業で申請する公募開始日以降に初めて取り組む事業について新規性を有するものとみなす、という考え方が示されています。すでに走らせている新規事業は、新規性の説明が難しくなり得ます。該当しそうな場合は、必ず要領の原文を確認してください。
⑧ 交付決定前に発注してしまう採択と交付決定は別です。交付決定より前に契約・発注した経費は対象外となるのが補助金の原則。納期を急いで先に発注し、全額自己負担になる事故は毎年起きています。採択後の流れは補助金は採択後が本番2026|交付申請から入金までの全フローで解説しています。

✍️事業計画書で審査員が見ているところ

🙋
社長さん
結局、どう書けば通るんでしょうか。
👨‍🏫
ナビ先生
この制度に限って言えば、審査の入口は明快です。「新規性」と「新市場」(進出枠)、「開発性」(革新枠)、「自発性」と「新たな国・地域」(グローバル枠)——枠ごとに問われている言葉が決まっている。その言葉に対する答えを、計画書の冒頭で言い切る。これに尽きます。
枠冒頭で言い切るべきこと数字で裏づけるもの
革新的新製品・サービス枠何を「開発」するのか。既存製品の改善ではないこと。同業で相当程度普及していないこと開発する製品の性能値、既存品との差、想定単価と数量
新事業進出枠自社にとって新規の製品等であること。かつ顧客の属性が既存事業と違うこと既存顧客の構成比、進出先市場の規模、想定シェアと売上
グローバル枠自発的な海外販路開拓であること。既存事業で扱っていない国・地域であること輸出先国の需要、現在の輸出比率、目標輸出額

そのうえで、共通して効くのが「数字の一貫性」です。売上計画・付加価値額・給与支給総額・投資回収——これらが別々の前提で書かれていると、読み手はそこで止まります。1つのエクセルから全部の数字が出ている状態にしておくこと。審査員の視点は補助金の事業計画書2026|審査員の採点表から逆算する7設計に、加点の取り方は補助金の加点項目2026|事前に揃える8つと取り切る優先順位にまとめています。

賃上げ特例を付けるなら、計画書の数字も連動させる付加価値額 年平均+4.0%、1人あたり給与支給総額 年平均+3.5%——この2つは計画書の収支計画にそのまま現れる数字です。特例を付けると宣言しながら、収支計画の給与総額が横ばい、では整合しません。宣言と計画表は必ず一致させてください。

🧭この制度を使うべき会社・使わないほうがいい会社

 向いている向いていない
投資規模1,500万円以上(進出・グローバル枠)/200万円以上(革新枠)数十万〜数百万円の小口投資
事業の性格新製品開発・新市場進出・輸出体制の強化既存業務の効率化・省人化のみ
資金繰り設備代金を先に自社で支払える/つなぎ資金の手当てがある補助金が入らないと支払えない
体制数字を作れる人がいる/認定支援機関や金融機関と関係がある社長ひとりで、通常業務の合間に書く前提
賃上げ今後5年で給与を上げていく計画が実際にある上限を上げたいだけで賃上げの当てがない
「向いていない」に当てはまったらこの制度が合わないだけで、他の選択肢は残っています。既存業務の効率化なら省力化投資の制度、小口の販路開拓なら小規模事業者持続化補助金、ソフトウェア導入ならデジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)——目的に合う制度を選び直すほうが、はるかに採択に近づきます。制度に自社を合わせるのではなく、自社の計画に制度を合わせてください。

❓よくある質問

「ものづくり補助金」はもう無くなったのですか?
2026年度は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として第1回公募が行われています。ただし公式サイトには、この補助金は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは異なる補助金である旨が明記されています。名称が似ているため、過去回の公募要領や解説記事をそのまま流用しないよう注意してください。制度の再編の経緯はものづくり補助金は統合2026でも解説しています。
締切はいつですか。8月末という情報も見かけました。
第1回公募の応募締切は令和8年10月30日(金)18:00厳守、申請受付の開始は令和8年9月30日(水)です。当初は申請受付8月31日・締切9月30日18:00という日程でしたが、2026年7月17日にスケジュールが変更されました。公式サイトの日程表では、旧日程に取消線が引かれた形で掲載されています(2026年8月時点)。
工場の増築費用は補助対象になりますか?
公表されている対象経費一覧では、建物費が含まれるのは新事業進出枠とグローバル枠で、革新的新製品・サービス枠には含まれていません(2026年8月時点)。また新事業進出枠・グローバル枠では、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必ず補助対象経費に含まれている必要があるとされています。建物費には別途の要件や上限が設けられている場合があるため、必ず公募要領の該当箇所をご確認ください。
賃上げ特例は付けたほうが得ですか?
一概には言えません。上限額は枠と従業員数に応じて100万円〜2,000万円上がりますが、自社の投資額 × 補助率が基本の上限額を超えていなければ、特例を付けても補助額はほとんど増えません。加えて、補助事業終了後3〜5年の計画で付加価値額 年平均+4.0%、1人あたり給与支給総額 年平均+3.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上——これらをすべて満たす必要があり、目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合があるとされています。増える金額とリスクを試算のうえ判断してください。
従業員が3人の会社でも申請できますか?
革新的新製品・サービス枠には従業員1〜5人の区分(基本上限750万円、賃上げ特例適用時850万円)があり、補助下限額も100万円です。一方、新事業進出枠とグローバル枠は補助下限額が750万円のため、補助率1/2の場合で投資額1,500万円以上の規模が必要になる計算です。小規模な事業者ほど、まず革新枠が現実的な入口になります。
認定経営革新等支援機関の関与は必要ですか?
公式サイトの「応募申請される方」の案内には「認定支援機関について」の項目が置かれており、関与や確認書が求められる場面があります。要否と必要書類は公募回によって異なるため、必ず該当回の公募要領で確認してください。支援機関の選び方は認定経営革新等支援機関2026|選び方と料金相場を参考にしてください。
申請したらいつ頃お金が入りますか?
補助金は原則として後払いです。締切(10月30日)から採択発表、交付申請、交付決定、設備の発注・納入、実績報告、額の確定——という順に進むため、入金までには相応の期間がかかります。設備代金は自社で立て替えて支払うのが前提となるため、つなぎ資金を含めた資金計画を先に立ててください。
不採択だった場合、次の公募に出せますか?
補助金は複数回の公募が行われるのが一般的です。第2回以降の日程は公表され次第、公式サイトのお知らせに掲載されます。不採択となった場合は、審査項目のどこが評価されなかったかを整理し、新規性・新市場の説明と数字の裏づけを補強してから再度申請するほうが、まったく別の制度を一から探すより効率的なことが多いです。

※本記事の金額・要件・日程は2026年8月時点で公式サイトから確認できた内容にもとづく整理です。公募回により要件・上限・日程は変わります。申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。第1回公募の公募要領は2026年8月14日に更新されています。

本記事の情報について

本記事は公開時点で確認できる公募要領等の一次情報に基づいて作成しています。補助金・助成金の制度内容、補助上限額、補助率、公募期間は予告なく変更される場合があり、同一制度でも公募回次によって要件が異なります。制度の統合・名称変更が行われることもあります。

ご申請の前には、必ず各制度の公式サイトおよび最新の公募要領をご確認ください。

本記事は制度の情報提供を目的とするもので、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。最終的なご判断は、各制度の公募要領および管轄の窓口・有資格者にご確認ください。

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タグ: #2026年最新 #ものづくり補助金 #中小企業 #補助金