なぜ同じ制度で「受かる人」と「落ちる人」が分かれるのか
はじめに — なぜ同じ制度で「受かる人」と「落ちる人」が分かれるのか
小規模事業者持続化補助金の採択率は、過去10回の公募平均で約60%。10社中6社は採択され、4社は不採択です。
でも、これを事務所単位で見ると景色が変わります。採択率80%を超える事務所がある一方、30%台の事務所もある。同じ制度、同じ審査基準、なのにこの差。
答えは一つ — 経営計画書の質です。
本記事では、行政書士業界で現場で何度も採択→不採択を目撃してきた視点から、「ここさえ押さえれば採択率が跳ね上がる」7つのコツを解説します。
コツ1:「定性」ではなく「定量」で語る
ダメな書き方
「売上が伸び悩んでおり、新たな販路開拓が必要と考えている」
採択される書き方
「直近3期の売上推移は2023年度:3,800万円、2024年度:3,420万円、2025年度:3,200万円と、年率約8%の減少傾向。特に主力のA商品(売上構成比45%)は、競合B社の参入により粗利率が5%→2.5%に悪化。新規販路開拓による売上回復が急務である」
なぜ差が出るか
審査員は毎回何百件もの計画書を読みます。抽象語は読み飛ばされ、数字は目に留まる。自社の経営状況を数字で細かく把握していること自体が、評価対象になります。
今すぐ書き出すべき数字
- 3期分の売上推移(%変化も)
- 主要商品/サービスの売上構成比
- 主要顧客層の属性(年齢/地域/業種)
- 客単価・客数の推移
- 粗利率の変化
コツ2:政策加点を取りこぼさない
加点項目とは
特定の条件を満たす事業者の採択率を上げる措置。「重要政策加点」と「政策加点」の2種類があり、それぞれ1種類ずつ、最大2種類まで併用可能。
2026年度の主な加点項目
| 加点区分 | 項目 | 条件 |
|---|---|---|
| 重要政策加点 | 賃上げ加点 | 事業期間内に従業員の給与+30円以上/時 |
| 重要政策加点 | 事業承継加点 | 後継者が申請 |
| 政策加点 | 経営力向上計画認定 | 中小企業等経営強化法の認定取得済 |
| 政策加点 | パワーアップ型加点 | 地域資源活用、海外展開 |
加点の効果
加点1個で採択率が約10%ポイント上がると言われています。2個併用できれば+20%も現実的。
💡 ポイント:「該当するかも?」と思ったら迷わず加点申請する。条件の解釈は審査側が行うので、申請しないと絶対に取れません。
コツ3:補助事業の「5W2H」を必ず盛り込む
採択される補助事業計画は、読むと映像が浮かびます。それは5W2Hが揃っているから。
| 要素 | 書くべき内容 | 例 |
|---|---|---|
| What | 何をするか | 新規ECサイトの構築 |
| Why | なぜ必要か | 実店舗だけでは売上上限。EC化で新規顧客獲得 |
| Who | 誰に売るか | 30-40代女性、都市部中心 |
| Where | どこで/どこ向けに | 全国(ECで地域制約なし) |
| When | いつ実施 | 2026年10月〜2027年3月 |
| How | どうやって | ShopifyでECサイト構築→SNS広告で誘導→LINE公式でリピート |
| How much | いくらかかる | 総額75万円(補助50万+自己負担25万) |
一文でこれら7要素を網羅できれば、審査員は「この人は計画を本当に練っている」と評価します。
コツ4:実現可能性を自社のリソースで裏付ける
書くべき根拠要素
- 時間: 「社長の月80時間 + パート10時間/月」等、工数配分
- 人: 誰が何を担当するか、役割分担
- スキル: 関連する経験・資格・過去実績
- 設備/環境: 既に保有している設備やITリソース
- 外部協力者: 税理士、社労士、IT導入支援事業者など
例
「本補助事業のEC構築は、社長本人がShopify構築経験あり(前職でEC責任者3年)、さらに取引先のデザイン会社C社が画面デザインを受託予定。運用は既存パート1名を担当者として指名済み」
このレベルまで書けると、審査員は「確実に実行されそう」と判断します。
コツ5:第三者レビューを必ず入れる
小規模持続化補助金は書面のみで審査されます。面接はありません。つまり、「伝わるかどうか」が命。
「伝わる計画書」になるには
- 業界知識のない人が読んで理解できる
- 専門用語に解説がある
- 論理の飛躍がない
- 数字の根拠が明確
レビュワー候補3パターン
| レビュワー | メリット | 費用 |
|---|---|---|
| 行政書士(補助金特化) | 採択のツボを熟知 | 有料(着手金10〜30万) |
| 商工会議所の経営指導員 | 地域の特性を理解 | 無料 |
| 他の経営者(異業種) | 素直な視点で指摘 | 無料 |
💡 理想:3者全員のレビューを順番に受ける。行政書士で論理、経営指導員で地域性、他経営者で読みやすさを確認。これで採択確率は跳ね上がります。
コツ6:地域性・独自性を必ず盛り込む
審査員が見るポイント
補助金は「国民の税金」。だから審査員は「この事業者を支援する意義があるか」を見ます。
意義を示す3要素:
- 地域貢献: この地域でやる必要性
- 独自性: 他社にない強み
- 社会的意義: 広い意味での意義
書き方の例
「当社は創業30年、○○商店街の一員として地元に根ざした事業を展開。人口減少が進む当地で、ECによる全国販売の道を開くことで、地域経済の底上げと雇用維持に寄与する。また、地場産品を使用した商品は、地域ブランディングの一翼を担う意味も大きい」
コツ7:見積書は相見積もり(3社以上)
なぜ必要か
補助金の経費は税金由来。審査員は「妥当な価格か」を厳しく見ます。1社だけの見積もりでは「本当に適正価格?」と疑われます。
必須の3社比較
- 100万円を超える経費は3社相見積もりが鉄則
- 30〜100万円の経費でも、できれば2社以上
- 30万円以下でも、ネットの類似商品価格を記載するとGood
相見積もりの取り方
- メールで見積もり依頼
- 「補助金申請のため」と明記(相手も慣れている)
- 納期・保証内容も揃える
- 3社から受け取ったら、選定理由を計画書に記載
💡 TIP:相見積もりで最安値の会社を選ばなくてOK。重要なのは『比較検討したこと』の証明。品質やアフターケアで価格差を正当化できれば、2番手・3番手を選んでも問題なし。
7つのコツの合計効果
| コツ | 採択率への寄与 |
|---|---|
| コツ1: 定量で書く | +7% |
| コツ2: 政策加点2種類 | +15% |
| コツ3: 5W2Hを明示 | +5% |
| コツ4: 実現可能性 | +5% |
| コツ5: 第三者レビュー | +5% |
| コツ6: 地域性・独自性 | +3% |
| コツ7: 相見積もり | +2% |
| 合計 | 平均+20% |
※ 上記は現場経験からの概算であり、全員に当てはまるわけではありません。
まとめ
7つのコツは、どれも「自分で書く前提」です。なぜなら、小規模持続化補助金は代行NG、経営計画書は事業者自身が作成する必要があるから。
でも、一人で7つのコツを完璧に盛り込むのは、正直ハードルが高い。そこで伴走型の支援を検討するのが賢明です。
FAQ
Q1. 7つのコツを全部盛り込むのは難しそうですが?
A. 全部は無理でも、上位4つ(定量・加点・5W2H・実現可能性)を押さえれば採択率は大幅に上がります。
Q2. 過去に不採択だったのですが、再申請で採択されますか?
A. はい。不採択理由を分析して改善した上で再申請すれば、採択率は上がります。
Q3. 政策加点の詳しい条件は?
A. 公募ごとに変わるため、毎回公募要領を確認する必要があります。
Q4. 見積もりが1社しか取れない特殊な商品ですが?
A. その場合、「他に代替となる商品がない理由」を詳細に説明することで対応可能です。
Q5. 相見積もりの3社は自分で探すのですか?
A. 自分で探すのが原則ですが、商工会議所や専門家経由で紹介できる場合もあります。