事業継続力強化計画2026|補助金の加点・特別償却16%・金利0.9%減
地震、豪雨、感染症、大規模停電——「うちが止まったらどうなるか」を一度も紙に書いたことがない会社は、まだ少なくありません。事業継続力強化計画は、その備えを国が認定してくれる制度です。しかも認定を受けると、①各種補助金の審査での加点、②防災・減災設備の税制優遇、③日本政策金融公庫の低利融資という三つのメリットが同時に狙えます。この記事では、制度のしくみと申請手順を、会話と図で整理します。
🧭事業継続力強化計画とは何のための制度か
事業継続力強化計画は、中小企業が自然災害等のリスクを認識し、防災・減災のための事前対策を計画としてまとめ、その内容について国(経済産業大臣)の認定を受ける制度です。根拠となるのは中小企業等経営強化法。認定を受けた事業者には、金融・税制・補助金といった支援措置が用意されています。
本格的なBCPが「発災後にどう事業を復旧させるか」まで精緻に描くのに対し、事業継続力強化計画は「自社にどんなリスクがあるか」「止まったら何が困るか」「そのために何を備えるか」「誰がどう動くか」という骨格を押さえるところに主眼があります。だからこそ、専任の防災担当がいない会社でも取り組めるのが特長です。
⚖️これは補助金ではなく「認定」— 性格の違いを押さえる
| 🎁 補助金 | 🤝 助成金 | 🛡️ 事業継続力強化計画 | |
|---|---|---|---|
| 性格 | 投資費用の一部を補助 | 要件を満たせば原則受給 | 国による「認定」。直接の給付はない |
| 審査 | 採択審査(競争)あり | 原則、要件充足で受給 | 要件を満たす計画であれば認定される |
| 得られるもの | 現金(後払い) | 現金(後払い) | 加点・税制優遇・低利融資などの資格 |
| 共通の鉄則 | いずれも「取り組む前」の申請・認定が原則。事後の後追いは効かない | ||
🏢対象になる事業者・計画に書く内容
計画に盛り込む項目は、おおむね次のような構成になります。難しく見えますが、「うちが止まる原因は何か」「止まったら何が困るか」「そのために今できることは何か」を順に埋めていく作業です。
| 記載項目 | 書く内容のイメージ |
|---|---|
| 事業継続力強化の目的 | なぜ取り組むのか。従業員・取引先・地域に対する責任という観点から |
| 想定される災害等 | 自社の所在地のハザードマップ等をもとに、地震・浸水・土砂災害・停電・感染症などを具体的に想定 |
| 被害の想定 | ヒト(従業員の負傷・出社不能)/モノ(建物・設備の損壊)/カネ(売上停止・資金繰り)/情報(データ喪失)の4視点で整理 |
| 初動対応の手順 | 安否確認の方法、避難の判断、責任者と代行者、連絡体制 |
| 事前対策の内容 | 設備の固定、自家発電機、データのバックアップ、備蓄、保険・共済への加入など |
| 推進体制 | 経営者の関与、社内の役割分担、平時の点検 |
| 訓練・見直し | 年1回以上の訓練、計画の定期的な見直しの方針 |
💎メリットの三点セット — 加点・税制・融資
①補助金の加点。ものづくり補助金をはじめ、複数の補助金で「事業継続力強化計画の認定を受けていること」が加点項目として設定されてきました。補助金の採択は数点の差で明暗が分かれることも多く、確実に取れる加点を積み上げておく価値は非常に大きいといえます。ただしどの補助金で加点対象になるか、いつ時点の認定が必要かは公募回ごとに異なるため、必ず該当の公募要領で確認してください。
②税制優遇。認定計画に記載した一定の防災・減災設備(自家発電設備、貯水タンク、耐震補強、防水・防火設備など)を取得した場合に、特別償却という形で税制上の優遇を受けられる制度が設けられています。設備の種類・取得価額の下限・適用期限などの細かい条件があるため、設備の選定段階で税理士に確認しておくのが安全です。
③日本政策金融公庫の低利融資。認定を受けた事業者が、計画の実施に必要な設備資金を借り入れる際に、金利の優遇を受けられる制度が用意されています。防災投資は「すぐには売上を生まない投資」だからこそ、金利面の後押しは実務上ありがたい支援です。このほか、信用保証の枠に関する特例や、認定事業者であることを示すロゴマークの使用が認められる点も、取引先や採用の場面で効いてきます。
メリット① 補助金の加点(どの制度で、どう効くか)
| 補助金 | 加点の位置づけ | 要点 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 政策加点⑨ | 重点政策加点1つ+政策加点1つの計2種までしか選べません。3つ以上を選ぶと加点審査の対象外になります。何を捨てるかの判断が要ります |
| 新事業進出・ものづくり 商業サービス補助金 |
加点項目⑦ | 第1回の締切は2026年10月30日18:00 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 加点項目No.2 | 一般型・カタログ注文型とも加点対象 |
| 中小企業成長加速化補助金 | 加点項目ではなく審査項目内の例示 | 加点として独立していない点に注意 |
さらに重要なのがタイミングです。加点を受けるには補助金の締切日までに認定が完了している必要があり、「申請中」では加点されません。認定の標準処理期間は45日、電子申請に使うGビズIDプライムの取得に約2週間。補助金の締切から逆算して2か月前には動き出す必要があります。
メリット② 税制優遇(中小企業防災・減災投資促進税制)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 特別償却率 | 16% |
| 対象設備と取得価額の下限 | 機械装置 100万円以上/器具・備品 30万円以上/建物附属設備 60万円以上 |
| 取得の時期 | 認定を受けた後に取得すること。認定前に取得した設備は対象外 |
| 補助金との併用 | 不可。国や地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得した設備は、この税制の対象外です |
また特別償却は「減税」ではなく「課税の繰延べ」です。初年度に多く償却できる分、翌年度以降の減価償却費は減ります。生涯の納税総額が減るわけではありません。
メリット③ 金融支援(日本政策金融公庫)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 設備資金(運転資金は金利引下げの対象外) |
| 金利 | 基準利率から ▲0.9% |
| 引下げの適用範囲 | 貸付限度額のうち 4億円まで |
| 貸付限度額 | 7億2,000万円 |
メリット④ 損害保険料の割引
🔄申請の流れ — 電子申請で完結させる
申請から認定までには一定の期間がかかります。「来週が補助金の締切だから、今週中に認定を取りたい」というのは現実的ではありません。補助金の加点を狙うなら、公募が始まるずっと前、できれば年度の初めに取得しておくのが理想です。
🚧よくあるつまずきポイント
🧩三点セットを同時に取りにいく組み立て方
なお、補助金と税制優遇・融資は目的が異なる支援なので、原則として併せて活用できます。ただし補助金の対象経費として補助を受けた部分をどう会計処理するかは、税務上の取り扱いに影響します。設備投資の規模が大きくなるほど影響も大きくなるため、投資判断の前に税理士へ相談しておくことをおすすめします。
❓よくある質問
💰加点が効く3つの補助金 — いくらの案件に効くのか
| 補助金 | 補助上限 | 補助率 | 締切 |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 (一般型通常枠 第20回) |
基本50万円/インボイス特例+50万円/賃金引上げ特例+150万円=最大250万円 | 2/3(赤字事業者の賃金引上げ特例は3/4) | 2026年11月5日〜12月15日 17:00 |
| 新事業進出・ものづくり 商業サービス補助金(第1回) |
革新的新製品・サービス枠:5人以下750万円/6〜20人1,000万円/21〜50人1,500万円/51人以上2,500万円(賃上げ特例で850万〜3,500万円)。新事業進出枠は最大7,000万円(特例9,000万円) | 中小1/2/小規模事業者2/3 | 2026年10月30日 18:00 厳守 |
| 中小企業省力化投資補助金 (一般型) |
5人以下750万円/6〜20人1,500万円/21〜50人3,000万円/51〜100人5,000万円(大幅賃上げ特例で1,000万〜6,500万円) | 中小1/2(最低賃金引上げ特例2/3)/小規模事業者2/3 | 第7回は2026年7月31日で終了。第8回は未確定 |
🧮モデルケース:従業員28名の金属加工会社がBCP認定で得られる金額
| 使う制度 | 内容(品目と単価) | 費用 | 適用される率 | メリット額 | ねらい |
|---|---|---|---|---|---|
| 防災・減災投資促進税制 機械装置 |
自家発電設備 1台 120万円 | 120万円 | 特別償却16% | 初年度 19.2万円を上乗せ償却 | 取得価額100万円以上の下限をクリア。停電時も成形機の段取り・検査工程を維持 |
| 同/機械装置 | 排水ポンプ 1台 150万円 | 150万円 | 特別償却16% | 初年度 24万円 | 浸水深1.0m想定への排水対策 |
| 同/建物附属設備 | 止水板 1式 80万円 | 80万円 | 特別償却16% | 初年度 12.8万円 | 建物附属設備の下限60万円以上をクリア |
| 同/器具及び備品 | 安否確認用タブレット 35万円×2台 | 70万円 | 特別償却16% | 初年度 11.2万円 | 下限30万円は合計額ではなく1台あたりの単価で判定されます。35万円×2台なら対象、17.5万円×4台では対象外 |
| 日本政策金融公庫 BCP資金(設備資金) |
防災設備投資一式の設備資金借入 4,000万円/10年(元金均等) | 4,000万円 (借入) |
基準利率 ▲0.9% |
支払利息の削減 約198万円(10年累計) | 引下げは4億円まで適用。運転資金は対象外なので設備資金で組む |
| 合計 | 設備 4点 | 420万円 | — | 特別償却 67.2万円 +利息削減 約198万円 |
— |
本記事の情報について
本記事は公開時点で確認できる公募要領等の一次情報に基づいて作成しています。補助金・助成金の制度内容、補助上限額、補助率、公募期間は予告なく変更される場合があり、同一制度でも公募回次によって要件が異なります。制度の統合・名称変更が行われることもあります。
ご申請の前には、必ず各制度の公式サイトおよび最新の公募要領をご確認ください。
本記事は制度の情報提供を目的とするもので、個別の申請可否や採否を保証するものではありません。最終的なご判断は、各制度の公募要領および管轄の窓口・有資格者にご確認ください。
この補助金の公募開始と締切を、メールでお知らせします
補助金の公募期間は中央値で36日しかなく、公表に気づいた時点で締切まで1か月を切っていることも珍しくありません。公募開始日と締切が公表され次第、無料でお送りします。業種をご記入いただくと、その業種で対象になりやすい制度を優先してお送りします。
お送りするのは制度の情報のみです。メールアドレスはお知らせ配信以外の目的には使用しません。